Seriola Initiative Report April/2019

Seriola Initiative Report April/2019
2019年4月5日 JSI
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ブリ養殖場の水質及び底質におけるプラジカンテルの予備的調査

(1) 背景

養殖の持続性を高めるためには、養殖魚に対する過度の投薬は避けなければなりません。しかし、万一魚病が発生した場合には、薬剤を用いた治療を余儀なくされます。やむを得ず使用した薬剤の残留が周囲の環境に与える影響をモニタリングすることは、私たちの責務です。プラジカンテル(PZQ)は、ブリ養殖ではハダムシ等の寄生虫の治療に使用されますが、PZQの使用が周辺環境に与える影響が報告された例はほとんどありません。そこで、私たちは、ブリ養殖場におけるPZQの環境中のモニタリングを実施しました。その結果、PZQは、投薬中の海水から僅かに検出されたものの、生簀直下より採取した底質を含め、全ての底質からは検出されませんでした。この研究は、査読付きのオープンアクセスジャーナルである「Fishes」より2019年3月に発表されました。
Ido, A.; Kanemaru, M.; Tanioka, Y. Preliminary Monitoring of Praziquantel in Water and Sediments at a Japanese Amberjack (Seriola quinqueradiata) Aquaculture Site. Fishes 2019, 4, 24.

(2) 材料と方法

サンプルは、三重県尾鷲市のブリ(S. quinqueradiata)養殖場で、2018年6月から8月の期間に採取しました。34°04’38.8″N / 136°13’12.4″Eに位置する生簀(縦9m、横9m、深さ10.5m)をモニターの対象としました(図1)。水質と底質は、海流に沿って、生簀から0m、30m、及び60mの地点、及び養殖場の外部で採取しました。採取したサンプルに含まれるPZQは、LC MS/MSを使用して検出しました。検出限界は、水質は0.0001 mg/L、底質は0.01 mg/乾燥kgでした。

図1. サンプル採取位置

丸囲みは監視対象生簀を示します。サンプルは生簀より海流に沿って0m、30m、及び60mの位置(矢頭)で採取しました。この地図は、国土地理院発行の航空写真を引用したものです。Scale bar; 50m

(3) 結果と考察

2018年7月下旬に、吸虫性の病気の治療のため、獣医師の処方に基づき、監視対象の生簀に対し、PZQを有効物質として含むハダクリーン®(バイエル社)を3日間経口投与しました。投薬中の生簀から採取された水質において0.003 mg/LのPZQが検出されましたが、生簀から30m ~ 60m離れた地点からは検出されませんでした。さらに、PZQは、底質サンプル全てで検出限界(0.01mg/乾燥kg)未満であり、生簀直下から採取された底質サンプルでも同様でした(表1)。また、鹿児島県及び宮崎県の別の養殖場においても、経口投与後5-6カ月後に採取した底質からはPZQは検出されませんでした。

表1. 養殖場の底質からの残留プラジカンテルの検出 -: 非検出

ブリでは、150mg/kgのPZQを3日間経口投与した後、48時間で血清、体表粘液、筋肉、肝臓、及び腎臓において検出限界未満となることが知られています [1]。本研究では、僅かなPZQが処置中及び処置3日後の海水中から検出されましたが、その後の検出の可能性は低いと考えられます。また、PZQ代謝物の環境に対する影響も考慮するべきですが、ヒラマサ(Seriola lalandi)におけるプラジカンテルの代謝物の薬理活性は低いことが報告されています[2]。したがって、ブリに経口投与したPZQの環境に対する影響は限定的であると考えられました。養殖場周囲の環境を守るため、環境影響に対するモニタリングは私たちの責務であり、今後もこのような研究を継続して参ります。本研究は、JSI協力会員であるWWFジャパンの支援を受けて実施されました。心より感謝申し上げます。

(4) 引用文献

1. Food Safety Commission of Japan Risk assessment report on an oral administering agent for veterinary use into hoses, containing ivermectin and praziquantel as active ingredients. Available online: http://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20071024027 (accessed on Feb 22, 2019).

2. Tubbs, L.; Mathieson, T.; Tingle, M. Metabolism of praziquantel in kingfish Seriola lalandi. Dis. Aquat. Organ. 2008, 78, 225–233.

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